筋機能矯正システム臨床の実際

筋機能矯正装置Myobraceを使って

講師 塩田 雅朗 先生

日時 2019年6月27日(木)大阪

講習会

この講習会は矯正専門治療を長年経験されてきた先生が行われました。先生いわくこれまでの矯正治療に対する概念を捨てないとこの治療は成功しません。不正咬合の原因を早期に診断しその原因を治さない限り、今までのような「力まかせの矯正」では後戻りもするし、意味がない。不正咬合の原因はただ1つ「口呼吸による低位舌」

鼻閉(原因)↔ 低位舌 ↔ 逆嚥下

口呼吸していると脳が酸欠状態になります。大人も同様で口呼吸していると睡眠が侵され疲れがとれません。正しい鼻呼吸を行えると質の良い睡眠を得る事ができます。口を閉じ、舌が上顎の正しい場所に位置する時に調和のとれた鼻呼吸が確立します。

不正咬合は小さな顎に大きな歯による原因ではなく、口呼吸や間違った嚥下による顎の発育不良であります。これらの原因を成長期にマウスピースを使ってなおすことにより、きれいな歯並びと顔面の良好な発育の両方を獲得できます。上顎骨の成長が一番ピークなのは7~8歳(ゴールデンエイジ)頃に行うのがベストです。6歳で60%の子どもが開始します。約2年半のプログラムで進めます。7割が4年生、9割が5~6年生で終了します。保定はいりませんが、悪習癖(口呼吸)が再発していないかの経過観察は必要です。

【質問1】

下の中切歯のみ不正咬合の場合はいつ開始すればいいのか?

➡もう少し待ってみようという考えは間違いです。すでに下の中切歯の歯列不正があるなら、その原因は口呼吸+低位舌ということ。すぐに開始した方が良い。

【質問2】

ディープバイト(過蓋咬合)は自然に治りますか?

➡絶対に自然には治らない。睡眠時の口呼吸により奥歯に舌をはさむ飲み込み方をするので、そのクセを治さないと治りません。

【質問3】

オープンバイトは治りますか?

➡上下の歯があたっていない状況なので、開咬の場合はマウスピースを入れて奥歯で咬みこむ動作をします。臼歯が積極的にあたることにより、歯がその感覚を覚え位置が決まります。当然マウスピースは破けますが、開咬の治療は従来の矯正治療でも困難です。この場合はマウスピースをおしがらず使用します。

【質問4】

舌のクセの子どもへの対応

➡下の前歯に舌の先を当てていると開咬になる。本人の意識が大切です。上顎のスポットに舌を当てないといけないことを実際に触ってもらい何度も確認することが大切です。口での説明では子供には伝わらず不十分な場合が多いです。

【質問5】

ガムトレーニングについて

➡まったく効果はありません。

【質問6】

マウスピースの選び方について

➡サイズは必ずブカブカが良いです。成長して大きくなるので小さな窮屈なものでは歯はならびません。犬歯にスペースのあるものを選ぶと拡大しやすくなります。どのシリーズにしても軟組織を排除することを頭に入れ選びます。

【質問7】

いつまでマウスピースを使いますか?

➡口唇が閉じている。正しい舌の位置。口を閉じると上下の歯がほんの軽く接触する。この3つができていれば後戻りはないのでマウスピースをやめても大丈夫です。また、口呼吸が始まれば必要になります。常に鼻呼吸を意識し続ける事がなにより大切です。歯並びが良くなって終わるのではなく、口呼吸が良くなってそれが維持できて終わりになります。

【質問8】

鼻づまりのひどい子はどうしますか?

➡耳鼻科と連携をとりつつ、口呼吸がすべての悪の原因なので少しづつでも努力して鼻呼吸を意識し練習します。鼻づまりは、口呼吸により酸素が減り、鼻の通路が酸欠により狭くなりつまっているように感じる場合が多いです。鼻呼吸を練習することで症状がよくなってくることも多々あるので、初めはつらいかもしれませんが、頑張るしかありません。

【質問9】

マウスピースを使うと治療途中で出っ歯や切端咬合になる?

➡オープンバイトやディープバイトは必ず出っ歯になってから治ってきます。前歯を拡げるために大きめのマウスピースを選びます(マウスピースに歯があたらない)。これにより位置の置換ができ治ります。

【質問10】

マウスピースの交換時期

➡4か月たつと少し縮んできます。また弾力も違ってきます。また、成長によりマウスピースが小さくなります。(子どもの服が小さくなるのと同じ)まじめに使用する子ほど、必要な時に適切なマウスピースに交換してあげた方が良い結果が得られます。

【質問11】

メンテナンスの注意点について

➡子どもの自然な話し方(鼻呼吸しているか)をみるために問診して、「しゃべらない間」をつくり観察することが大切。

①今日は何月何日ですか?

②お名前は?

③昨日の夜ごはんは何でしたか?

必ずこの順番で聞きます。考えている間に口呼吸がでていることを見逃さない事。(治っていればでません)

しゃべっている動画(正面と斜め)を撮影し何度もみて悪いクセがないか見極めます。透明のコップで水を飲むところもみます。口を閉じたまま飲みこめるかなど。