子どもの反対咬合
保護者の方は心配されていると思います
当院は矯正専門の歯科医院ではなく
マウスピースの使用やクセの改善のみで
4歳~12歳頃までの子どもを対象に
ご本人や保護者と一緒に考え
アドバイスをしながら歯並びの改善を
期待する方法を取り入れています
当院はレントゲンのセファロ分析は
装置がないのでしておりません
他医院での資料があればご確認致します
反対咬合は他の歯列不正と違い
歯性(歯だけ考えればいい)と
骨格性(下顎の過成長)があり
年齢や程度によっては成人になってから
手術が必要な場合があり見極めが重要です
反対咬合は背景(遺伝や環境)が多種多様であり
10人の矯正専門医がいれば10通りの考えが
あるとも言われています
13歳頃の下顎骨の二次成長促進期も
その程度の予想が困難です
保護者の方に理解しやすいように
これまでの経験と論文から考えを整理し
また最近行われている
他の医院での治療をHPで確認し
このページにまとめてみました
この青ラインは当院の考えるポイントです
全部読めないときは青ラインだけでも
下顎の成長の予想は難しい
下顎前歯の舌側傾斜の場合は困難
親が骨格性の反対咬合でも
骨格性反対咬合でない子もたくさんいます
同じ兄弟姉妹でも違いがあります
話は変わりますが身長の高い人低い人など
予想はできますが、結果論になります
もう少し身長が高ければ・・低ければ・・
〚文献No.01〛
下顎骨の成長とGHR P561T変異の関係に
ついての分子遺伝学的研究
佐々木康成 小児歯科学雑誌 44(2)
2006 162
先に感想として
私も思っていたことですが
何かの遺伝的検査で
将来の下顎の過成長の有無がわかれば
治療の選択肢が少なくなり
集中できるのにと・・・
【対象と方法】
4歳頃から12歳頃までの
反対咬合30名と正常咬合29名の
頬粘膜細胞からDNAを抽出し
セファロで比較分析
【考察】
反対咬合のメカニズムの複雑さから
成長発育期の反対咬合に対する
遺伝的変異の影響は依然不明である
今回の研究でも
下顎骨の成長発育に関しては
さまざまな要因が複雑に関与しており
今後の研究に期待するまでとなっています
いつ頃から開始?
治療の開始は4歳過ぎれば
被蓋を改善し舌の場所を確保
ムーシールドによる反対咬合の早期初期治療
2009年発行 柳澤宗光 より引用
【反対咬合の特徴と治療目標】
どんな歯並びの場合?
念のため乳歯列が反対咬合なら
【当院の方針】
A:乳歯列期~混合歯列期の初期
[上下の6歳臼歯の位置関係が決まる前]
この時期は骨格性が疑われたとしても
文献的にも骨格性に移行しない目的と
チンキャップ等の併用が難しい年齢でもあり
希望があれば
ムーシールドの効果を信じて実地します
治療方法は?
ムーシールドと舌の訓練
〚文献No.02〛
乳歯列反対咬合の改善前後における
歯列咬合の三次元的変化に対する研究
肥川員子 小児歯科学雑誌 37(4)
1999 716-725
乳歯列反対咬合の発現頻度5~10%(日本)
4装置で反対咬合の治療の評価を行った
20名:平均開始4歳1か月~終了5歳3か月
作用機序は異なるが全員被蓋は改善した
チンキャップ
昔は4歳頃もしていたようですが
上顎の成長が10歳頃終わるので
また下顎の二次成長促進期が
11歳頃より開始されるので
評価を行い必要なら11歳頃から使用
上顎前方牽引装置(フェイシャルマスク)
上顎の歯にワイヤーをつけ
頭を固定源にして上顎をゴムで引っ張ります
7歳(6歳臼歯が安定)~10歳(上顎の成長終了)
反対咬合が上顎劣成長と言われているので
良い治療と思いますが費用が高いようです
寝ている時に1日10時間ほど使用します
〚文献No.03〛
成長期にある骨格型反対咬合患者の矯正治療
顎整形力の適用とその効果
三浦廣行 岩医大歯誌 28
2003 1-7
上顎牽引装置とチンキャップを併用した4症例
感想として
思春期の頃の下顎の成長は盛んで
予想を超えることもあり
それでも少しでも早くから治療した方が
結果的にギリギリ被蓋が
改善する状態にもっていけるかどうか
また被蓋が一度改善すると
被蓋と咬合によりある年齢では
下顎の成長に同期しながら上顎が前方に
成長する可能性もある事がわかった
症例1(10歳2か月~)
上顎前方牽引装置で5か月で被蓋が改善
一度被蓋が改善すると
上顎は15歳まで下顎の成長と同期し
前方への成長が認められた(16歳まで)
症例2(4歳7か月~)
上顎前方牽引装置を約4年使用
チンキャップも併用
9歳でチンキャップをやめると後戻り
14歳で下顎の成長が盛んで切端咬合
症例3(11歳~)
上顎前方牽引装置とチンキャップの併用
チンキャップをやめると下顎は前方に
正常被蓋のまま
上顎もそれに同期して前方にいく
症例4(11歳8か月~)
上顎急速拡大装置
上顎前方牽引装置
チンキャップの使用
一時はよくなったが
16歳での評価ではANBは初診時に戻った
【考察】
遅くても7歳までに治療を開始する
装置をはずすと後戻りの傾向もみられた
リンガルアーチ
6歳臼歯が安定する7歳以降
歯に装置をつけますが単純なもので
ワイヤーの弾力で歯を押します
10~20万円ぐらいが多いようです
アクチベーター
感想として1999年当時の治療法がわかった
どの装置がどのような症例にお勧めかは
わからなかった
4歳過ぎから始めていることわかった
今も同じような治療をしてるところも多い
他の治療法は?
6歳までならムーシールドを考えます
装置をするなら6歳臼歯の安定後
当院は被蓋が改善しても舌の位置の維持のため
半年ほどムーシールドを使い
その後マイオブレースに移行します
経過観察を行いつつ14歳頃まで
マイオブレースのK1で保定していきます
来院時のチェック項目
家族歴の確認
舌小帯の確認
ANB値はセファロ分析ができないので
その他の項目から判断
ムーシールドの使用を
4歳をすぎれば考えますが
まだまだ小さな子どもです
家族が希望すれば4歳でトライするのも可能
文献的にも4歳以下でも開始しています
トライはしてみたものの使用できない時は
無理にはせず1か月待つのを繰り返し
あせらず使用できる時を待ちます
文献では可及的に早くとありますが
経験では4歳半で開始して
1年間変化がない事もあります
ムーシールドがまだ無理でも
舌の訓練(マイオブレースと同じ)を
毎日2~3分行います
片肘つきの癖や顎の下に手をのせる癖
爪咬み癖など下顎を前に誘導させる癖を
治すように努力します
開始後は経過観察を繰り返し
歯性および骨格性の程度を評価します
レントゲン(セファロ)は必要?
正しい診断のため必要だと思います
セファロ分析のみが確定診断ではないので
あくまでも他の所見と合わせて総合的に
考えるための1つの大切な指標と思います
当院ではセファロ分析ができないので
他の所見で考え説明し進めていきます
やはり一番は
経験豊富な矯正専門医の知識と技術と思います
そこにたどり着くのも運や努力が必要ですが
努力だけではどうにもならないこともあります
当院の治療方針は
歯や顎を力で動かす
本格的な矯正ではなく
マウスピースにより
舌や唇や頬などの歯の周りの組織の
バランスを整えることにより
その結果歯並びが良くなることを
期待することですので
限界があり
1人1人の背景(遺伝や生活習慣)が違い
やってみないとわからない事もあります
B:混合歯列期(前期)
チェック項目
6歳臼歯の咬合関係 Ⅰ級かⅢ級
[乳歯が10本前後残っている時期]
(参考)乳歯は全部で20本あります
上下の6歳臼歯の位置関係が決まった後
a)歯性と考えられるもの
ムーシールドの適応と考えます
b)やや骨格性を疑うもの
ムーシールドの適応と考えます
c)骨格性が強いと考えられるのも
一度矯正専門医でのご相談をお勧めします
C:混合歯列期(後期)~乳歯がなくなるまで
[乳歯が4本前後残っている時期]
a)歯性と考えられるもの
ムーシールドの適応と考えます
10歳ぐらいですが?
いろいろな事を考えます
上顎の成長が終わる頃で
もうすぐ下顎の成長がはじまります
時間が限られ時間を無駄にしたくないので
現在の考えられるベストな治療法とは
やはり矯正専門医の考えが必要です
その上ですべての方が
高額な費用に対応できるわけではなく
経験と技術のある専門医に
出会えるわけでもないので
すべてを理解した上で
ムーシールドやマイオブレースでの
マウスピースでのチャレンジを
希望されるのであれば一緒に考え
診ていきたいと思います
b)やや骨格性を疑うもの
一度矯正専門医でのご相談をお勧めします
現状をご理解して頂いた上で
ムーシールドを希望されれば対応致します
c)骨格性が強いと考えられるのも
一度矯正専門医でのご相談をお勧めします
〚文献No.04〛
骨格性反対咬合の早期初期治療
筋機能訓練装置:
ムーシールド(YC3)による治療
柳澤宗光
学術レポート
先にこの文献の私の感想として
症例1~症例6の
遺伝的・骨格性反対咬合も
ムーシールドのみで管理し治療できている
1)はじめに
2)反対咬合の原因と改善策
ムーシールドの3つの機能
反対咬合の3つの主な原因を改善します
上唇圧を排除
口唇閉鎖時のオトガイ部に過緊張を与える
舌を挙上する
3)ムーシールドの構造
4)骨格性と歯性の鑑別
セファロではANB値に現れる
A点がB点より後方:骨格性の指標
A点がB点より前方:歯性の指標
5)家族性反対咬合 症例1
両親が反対咬合の治療歴
3歳2か月ANB1.3→4歳4か月ANB2.7
6)家族性反対咬合 症例2
母親が反対咬合の治療歴
5歳2か月ANB1.2→5歳10か月ANB1.5
7)家族性反対咬合 症例3
父親は反対咬合
6歳5か月ANB(-3.6)→7歳3か月ANB(-0.4)
被蓋は改善し経過観察中
8)全顎反対咬合 症例4
父親に反対咬合の治療歴
6歳6か月ANB0.8→7歳1か月ANB2.5
6か月で被蓋が改善
9)長期観察例 症例5
9歳10か月ANB(-3.2)→13歳9か月ANB(-1.8)
ムーシールドのみで治療
19歳になり経過観察中
10)長期観察例 症例6
6歳4か月ANB0.8→16歳1か月ANB1.8
咬合平面の平坦化により反対咬合が改善
11) 交叉咬合 症例7
12)1歯のみの反対咬合 症例8
13)おわりに
可能な限り早期に正常な成長を阻害する
因子の除去は大切であり
遺伝的要因をもつ反対咬合症例の
成長を予測することは困難である
初期治療後の定期健診は重要である
ムーシールドは骨格系にも働く
下顎の成長抑制効果もある
〚文献No.05〛
機能的矯正装置ムーシールドによる
反対咬合小児の治療効果と
歯列・歯槽部の形態的変化
中原弘美 小児歯科学雑誌 51(4)
2013年 429 – 439
私の感想として
急がないにしても乳歯列のうちに
ムーシールドをする価値はあり
骨格性に移行するのを予防できる
骨格性とは移行するもので
遺伝で決まったものではないのか・・
舌小帯の異常が関係するとは・・・
Ⅲ級の改善もあるとは・・・
【対象と方法】
※既製品のムーシールドではありません
反対咬合66名(平均年齢5歳1か月)
3歳以上~4歳未満 13名
4歳以上~5歳未満 17名
5歳以上~6歳未満 17名
6歳以上~8歳未満 19名
ターミナルプレーンは
メディアルステップ型57名
(参考)日本人の60~70%がvertical type
(参考)日本人の15~20%がmesial step type
(参考)霊長空隙
66名中継続使用した52名は改善した
最短1.2か月
最長28.9か月
平均9.8か月
8名は中断
6名は再発
永久歯での再発は6名(後に改善)
舌小帯異常が3名(再発例)
家族歴遺伝的3名(再発例)
5名は再度ムーシールドと訓練
1名は拡大床とチンキャップ
【結果】
<模型分析>
①歯列弓幅径
乳犬歯間で上顎は増大した
乳犬歯間で下顎は小さくなった
②歯列弓長径
上顎で大きくなる(特に乳犬歯前方)
下顎で小さくなる(特に乳犬歯前方)
③咬合高径
大きくなる
<セファロ分析>
①骨格系
ANBとFMAとY-Axisで有意な増加
下顎骨の後退と時計方向の変化が起こる
APDIで有意な減少
APDI
ANSとPNSを結ぶ直線・nasal floorと
A点とB点を結ぶAB平面の成す角度
Ⅲ級傾向の改善していることがわかる
Ⅲ級とは(下の写真参考)
上顎の6歳臼歯に対して
下顎の6歳臼歯が前に出ている分類
模型による咬合関係の分類
Ⅰ級咬合関係(いわゆる正常)
下顎の6番が半咬頭前方
Ⅱ級咬合関係(いわゆる上顎前突)
Ⅲ級咬合関係(いわゆる反対咬合)
②歯槽系
U1 to SN U1 to FH は増大
L1 to MP は減少(下図③)
上下中切歯歯軸の改善
反対咬合により上顎前歯部は普段から
下顎歯により唇側・側方への成長が抑制され
ムーシールドにより咬合が挙上され
スプリント効果により下顎前歯による
上顎前歯への口蓋方向への機能的圧力が
解放されるため上顎前歯は自然に前方へ移動し
乳犬歯も唇側へ移動する
前歯の被蓋の改善
側方歯の咬合接触、咬合力(筋力)による
新たな咬頭嵌合位の獲得と機能安定への変化
【考察】
伊藤(1995)
反対咬合を放置すると
歯性から骨格性へ移行し
顎顔面形態が増悪するので
できるだけ早期に咬合を改善し
審美的問題だけではなく
将来の永久歯列における不正を予防し
機能的に安定した咬合を営ませることが重要
Yawaka(2003)
反対咬合は被蓋が改善してから
咬合が安定し機能するまで平均6か月かかる
永原(1992)
ⅡA期からⅢA期の反対咬合の
84.3%は自然によくならないので
早期に正しい筋機能に修正し
正しい被蓋関係で正しい咀嚼機能を獲得
【結論】
幼児期における反対咬合の治療に有効
歯や顎骨に直接的な矯正力を働かさなくても
前歯の傾斜だけではなく
上下顎骨の位置関係や口蓋の形態にまで
良い変化をもたらしている
〚文献No.06〛
乳歯列期反対咬合における治療前後の
顎顔面形態および舌位の変化
ムーシールドとチンキャップの比較
小野寺妃枝子 小児歯科学雑誌 41(5)
2003年 880 – 886
【対象と方法】
ムーシールド12名 平均4歳4か月~6歳6か月
チンキャップ9名 平均4歳6か月~6歳3か月
セファロで分析
【結論】
ムーシールドによる機能の変化は
骨格系の成長旺盛な時期に
機能面から骨格系に影響を及ぼすことが
推測できた
早期の舌の位置の改善も大切
〚文献No.07〛
乳歯列反対咬合への機能的矯正装置による
治療効果の三次元的評価
田村康夫 小児歯科学雑誌 54(4)
2016年 423 – 432
私の感想として
被蓋が改善すると舌の位置も上がり
口蓋(前方部)が広くなる
ほんの少し前歯が滑るだけで反対になり
ロックされる
【対象と方法】
ムーシールドで被蓋が改善した20名
3歳9か月~5歳11か月(平均4歳6か月)
三次元的模型分析を行った
【結果】
上顎乳前歯は前上方そして側方にも拡大
乳犬歯は外側へ
乳臼歯は外側へ拡大しながら挺出する
そのようにして反対咬合が改善していく
【考察】
いろいろな文献から
機能性反対咬合とは早期接触によって
下顎が誘導され咬頭斜面を滑走するような
偏位が側方成分も含め近心方向に生じるもの
閉口時咬合位は本来の中心咬合位と一致しない
乳歯萌出時に一度前歯の被蓋が生じると
咬合力によりロックされた状態が継続され
さらに上口唇の圧力で上顎前歯が移動できず
口蓋がせまくなるので舌が低い位置にあり
悪循環となる
〚文献No.08〛
乳歯列期前歯部反対咬合における
機能的矯正装置の適応症の検討
児野朋子 小児歯科学雑誌 44(5)
2006年 702 – 708
私の感想として
この論文は乳歯列期に
骨格性になるかの判断基準の検討で
興味深い
【対象と方法】
反対咬合20名(4歳半)+正常咬合10名(4歳半)
10名はムーシールドだけで改善
10名はムーシールドと他の治療を併用
30人の治療前のセファロで比較分析
特にKix-index(APDI/ODI)で評価
【結果】
APDI:上下顎の前後的な相対的位置関係
大きければ→Ⅲ級傾向
小さければ→Ⅱ級傾向
今回の正常群(対象):78.44±3.95
ムーシールドの単独群:86.42±3.99
併用群(治療困難群):89.57±6.10
ODI:上下顎の垂直的な位置関係
大きければ→deep bite
小さければ→open bite
今回の正常群(対象):72.92±6.43
ムーシールドの単独群:66.87±4.19
併用群(治療困難群):62.99±4.56
Kix-index(APDI/ODI):困難の指標
大きければ→困難
今回の正常群(対象):1.09±0.12
ムーシールドの単独群:1.30±0.10
併用群(治療困難群):1.43±0.15
【考察】
居波(1999)
混合歯列期での報告として
Kix-index(APDI/ODI)が高いほど
骨格性反対咬合に移行しやすい
Kix-index1.5~2.0で
将来外科的矯正の可能性が高い
今回の論文(2006)
乳歯列期で
Kix-index1.3以上で
機能的矯正装置を使用する際には注意する
Kix-index
頭蓋に対して上顎骨・下顎骨の角度を調べ
将来的に外科的矯正治療が必要になるほど
過成長するかどうか判断する指標の1つである
上下顎の前後的位置関係
APDI
ANSとPNSを結ぶ直線・nasal floorと
A点とB点を結ぶAB平面の成す角度を
ODI
AB平面と下顎下縁平面の成す角度から
nasal floorと口蓋平面の成す角度を加えた数値
で割って算出する。
日本人の平均は1.13で、
1.5以上ある場合は
外科的矯正治療が必要になるとされる
その他の判断基準の項目
ANB :値が小さい場合は困難
AO-BO :値が小さい場合は困難
over-jet:値が小さい場合は困難
(被蓋が浅いほど困難)
小野寺(2001)
可及的に低年齢児からムーシールドをする
〚文献No.09〛
筋機能訓練装置を応用した患者における
年間成長発育量の検討
山本貴子 顎咬合誌 第31巻 第3号
2011年 196 – 205
私の感想として
2症例とも6歳ですが
正常咬合児の6歳の平均値が知りたいです
低年齢児にチンキャップは頭蓋や顎に悪影響
低年齢児に前方牽引装置は頭蓋や顎に悪影響
ムーシールドは上顎の自然的拡大が目的
ムーシールドは咬合平面の平坦化が目的
ムーシールドは舌の挙上
ムーシールドは口唇圧の排除
嚥下時下唇圧のバクシネーターメカニズム
本研究は2名の年間成長量の評価を行った
【症例1】6歳5か月女児
オーバージェット:-2mm
オーバーバイト:+2mm
ターミナルプレーン:メディアルステップ
治療効果(2年後と比較)
SNA 88→88
SNB 85→83
ANB 3→5
FMA 21→21
Ptm-A 46→48
Ptm-B 43→43
Ar-Go 38→40
Go-Me 72→74
骨格系ANBが2°から5°に増加→骨格系の改善
上顎骨の前下方成長の確認
下顎骨の下方向成長の確認
開始後9か月で被蓋は改善する
【症例2】6歳2か月男児
オーバージェット:-2mm
オーバーバイト:+2mm
治療効果(4年後と比較)
SNA 81→81
SNB 79→78
ANB 2→3
FMA 27→28
Ptm-A 45→49
Ptm-B 41→42
Ar-Go 42→46
Go-Me 60→70
骨格系ANBが2°から3°に増加→骨格系の改善
上顎骨の前下方成長の確認
下顎骨の下方向成長の確認
開始後12か月で被蓋は改善する
これらの効果として
シールド部分が上口唇圧を排除し
同時にオトガイ部の過緊張を生み出す
タングガイドエリアによる舌の挙上
嚥下のたびに上顎前歯に舌圧がかかる
上顎前歯の突出
下顎の成長抑制効果もある
上顎骨の前方への発育はなかった
〚文献No.10〛
乳歯列反対咬合の被蓋関係前後の
顎顔面形態および機能の変化
ムーシールドとチンキャップの比較
加藤めぐみ 小児歯科学雑誌 41(2)
2003年 394
乳歯列期に開始しセファロで分析
ムーシールド 12名
開始時平均年齢4歳4か月
終了時6歳6か月
チンキャップ 9名
開始時平均年齢4歳6か月
終了時6歳2か月
【結論】
被蓋改善の治癒機構は
ムーシールドとチンキャップでは異なる
ムーシールド(骨格系より歯系で改善)
上顎骨成長促促進
咬合平面の平坦化
前歯部歯軸の改善
低位舌の挙上
(結果)咬合平面の平坦化
(結果)下顎枝の成長
(結果)舌の挙上と後方位
チンキャップ
下顎骨の後方回転を行う
(結果)下顎骨の後方位
(結果)下顎角の減少
(結果)舌の位置の後方位
〚文献No.11〛
骨格性反対咬合に対する長期的な咬合管理
チンキャップ療法により
正常咬合を獲得した2症例
関 龍彦 小児歯科学雑誌 38(2)
2000年 375
私の感想として
15歳頃が身長増加曲線からも
第二次成長促進期を過ぎた頃みたいです
第一次成長促進期(乳歯列期~)
ここから抑制をすることが重要とのこと
第二次成長促進期(症例2では12歳8か月頃)
2000年の論文なので
実際の開始は
10年前の1990年頃になるのでしょか
選択肢がなければいいのかもしれません
症例1開始年齢4歳0か月→15歳5か月
下顎角の開大と下顎骨の前方回転および
中顔面の劣成長を主因とする骨格性反対咬合
over jet -1.60mm over bite2.40mm
チンキャップのみでの治療
安定期には中断し促進期には再使用
over jet 3.30mm over bite3.30mm
症例2開始年齢4歳0か月→15歳1か月
中顔面の劣成長を主因とした
上顎前歯の舌側傾斜を伴う骨格性反対咬合
over jet -1.00mm over bite2.15mm
チンキャップのみでの治療
安定期には中断し促進期には再使用
over jet 4.00mm over bite3.30mm
【考察】
骨格性反対咬合の因子
・下顎体が大きい
・下顎角が大きい
・下顎角の前方回転
・鼻上顎複合体の前方発育不全
牽引荷重450g~950g
〚文献No.12〛
乳歯列期の反対咬合症例に関する研究
第2報
チンキャップによる治療効果について
矢野 理 小児歯科学雑誌 18(2)
1980年 219-233
私の感想として
42年前の論文ですが
4歳前から平均6か月チンキャップをする
著者が言うように上顎の劣成長に対して
普通の成長の下顎を抑制すると
審美的には改善するが
何か違うような気がします
早期のチンキャップ治療が及ぼす影響の検討
乳歯列期にチンキャップで改善した16名
開始年齢(3歳4か月~5歳0か月 平均4歳)
チンキャップは夜間12時間
牽引力は中央部で500g
試用期間は最小3か月~最大11か月
平均5.5か月
【結論】
日本人に多いとされている上顎骨
上顎歯槽基底部の劣成長を伴う反対咬合を
チンキャップで骨格的な不一致の改善は困難
治療後にみられた歯性の不一致は
チンキャップでの悪影とも考えられる
〚文献No.13〛
チンキャップの適応に関する研究
森主宜延 小児歯科学雑誌 36(4)
1998年 604-612
51名(平均開始3歳6か月~終了11歳)
14時間の使用で
400g~600g
【考察】
チンキャップの使用は安易に行うのではなく
別のより有効な装置にて
歯性による機能的要因を改善し
その上で改めて骨格性の要因の有無を判定し
目的にあった効果的な使用が重要である
私もそう思います
〚文献No.14〛
骨格性Ⅲ級ボーダーライン症例における
外科的矯正治療または矯正治療単独かの
治療法の選択基準について
中尾友也 北海矯歯誌 49(1)
2021年 1-10
【対象と方法】
28名(思春期性成長が終了した平均24±7.3歳)
外科矯正を必要とした11名
外科矯正を必要としなかった17名
【考察】
初診時から下顎前歯の舌側傾斜が強い場合は
外科的矯正治療の適応となる可能性がある
この研究および他の研究でも
骨格系では
この2つの分析が大きな指標となる
ANB
Wits appraisal=d(下図の拡大図中)
歯系ではIMPAとover jet
今回は以上となりますが
随時更新していきたいと思います
2022年4月
【いろいろな医院での治療例】