「あごが小さい」との相談がよくあります
かかりつけの歯科医院で
あごが小さいので歯並びが悪くなると言われた
あごを拡大(ネジで広げる)した方がいいと。
矯正専門医でない普通の歯科医師として
私が疑問に思うことは
「その基準は」「その程度は」「その経過は」
歯科矯正ではセファロ分析(レントゲン)で
いろいろ評価しますが
セファロは矢状断(横顔)なので
あごの大きさが評価できるのか疑問です
単純に模型(水平断)で計測して
平均値と比べた方が早い気がします
前の歯科ではレントゲンは撮ったが
模型は作ってない子どもがほとんどです
模型がなくても
滅菌したノギスでも簡単に直接測定できます
1997 小児歯科学雑誌 35(4):670-683
幼児期から青年期にいたる歯列弓幅径の
成長発育に関する累年的研究
簡単に内容をまとめますと
矯正をしていない28名(3歳から20歳)の
歯列模型(2か月~6か月間隔で作成)で
左右の歯の距離を成長とともに計測した論文
※犬歯より後方の歯のすべてで計測
※舌側歯頚部の最下点の歯肉境界部で計測
【当院の参考例として】
①開始時(7歳5か月) 男の子
「あごが小さい」と言われ来院
模型計測で上顎乳犬歯間距離が23.52mm
7歳平均26.05mm~8歳平均27.34mm
計測上平均より約3mmほど小さい
その後マイオブレースを約3年間で
K1(M)→K2(L)→T2(L)→T2(L)と4個使用
②6か月後(7歳11か月)
模型計測で上顎乳犬歯間距離が25.17mm
7歳平均26.05mm~8歳平均27.34mm
半年で2mmほど自然に大きくなったが
まだ2mm小さい
③3年1か月後(10歳6か月)
乳犬歯は犬歯になりました
この2年半は
犬歯部での側方成長が全く変化なし
模型計測で上顎犬歯間距離が25.18mm
10歳6か月平均28.71mm
3mm小さいが全体のバランスはいい
6歳臼歯部では大きく成長
6歳臼歯間距離は33.05mm(平均35.21)と
2年半前の29.31mm(平均34.19)より
3.5mmも大きくなった(平均よりは小さい)
乳犬歯→犬歯(永久歯)で
多くの症例ではそれほど変化がないです
MRC(マイオブレースの会社)では
BWS(拡大ワイヤー)の併用を推奨しています
BWSが良いのかどうかはわかりませんが
BWSをすると本格的な矯正になり
癖を改善して歯並びを良くする概念と異なり
当院はBWSの技術がありませんので
マウスピースだけでの結果となります
10歳6か月で約3年頑張って頂き
犬歯間および第一大臼歯間の距離も
平均より小さいですが
ご家族ご本人とも満足してくれています
まだ乳歯が2本残っているので
また爪咬み癖もあるので
引き続き経過をみていきます。
もっと「あごの小さい」症例もあり
やってみないとわかりません
3mmほど小さい子どもは多いです
改善のみられない子も数人います
拡大が必要と思うこともありますが
専門医でなく拡大はしたことがないので
詳しい事はわかりません
マイオブレースのみでの
過去の症例の経過のご説明になります
あごの小さい場合は
K1の使用を短めにして
早期にK2あるいはT2の使用を考えます
★8歳4か月に開始した症例です
上顎乳犬歯間距離25.0mm(平均27.5mm)
パッと見た感じ
上も下も前歯の生えるスペースがなさそう
でもあごは平均よりやや小さい程度
K1Mでスタート 日中と就寝中頑張る
(アクティビティはしていません)
11か月後 ↓
K1Mで11か月経過を診てきました
安定してきたのでT2Mに変更します
個人差はあると思います
やってみないと結果はわかりませんが
チャレンジする価値はあると思います